レポート

介護事業所の倒産が過去最多!2024年の現状と生き残り戦略

2024年度の倒産統計データから見る介護業界の現状と小規模事業者の課題分析。

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2024年介護業界の倒産状況概要

2024年度、介護事業所の倒産件数は過去最多となる深刻な状況を記録しました。東京商工リサーチの調査によると、この数字は介護保険制度開始以来最も高い水準となっており、業界全体が構造的な課題に直面していることを示しています。

179件
2024年度倒産件数(前年比36.6%増)

倒産・休廃業を合わせた件数は784件(前年比24.0%増)に達し、単純な一時的経営難を超えた、業界構造そのものの問題を浮き彫りにしています。

倒産の主要因分析

介護事業所の倒産には、以下の主要因が複合的に作用していることが統計データから明らかになっています。

人的要因

介護業界では慢性的な人手不足が続いており、厚生労働省の推計では毎年約5万人の人材が不足しています。この人手不足は単なる採用難にとどまらず、既存職員への過重労働、離職率の高さ、サービス提供能力の制約といった連鎖的な問題を引き起こしています。

制度的要因

過去20年間で介護報酬は5.1%の微増にとどまる一方、人件費は50%上昇しています。さらに、BCP策定義務化、虐待防止体制整備、感染症対策強化など、新たな義務の追加により事務負担が大幅に増加しています。

経営的要因

物価高騰による光熱費・食材費の上昇に加え、大手事業者や異業種からの新規参入による競争激化が収益性を圧迫しています。特に資本力のある大手事業者との人材獲得競争では、小規模事業者は構造的に不利な立場に置かれています。

技術的要因

デジタル化の遅れも深刻な問題となっています。IT人材の不足、導入コストの負担、既存業務フローとの整合性などの課題により、多くの小規模事業者では依然として紙ベースやアナログでの業務処理が残存しています。

小規模事業者に集中する倒産リスク

統計データが示す最も深刻な傾向は、倒産事業者の偏在性です。全介護事業者の36%を占める従業員10人未満の小規模事業者が、倒産件数の90%以上を占めているという現実は、業界の二極化を如実に表しています。

90%以上
倒産事業者に占める小規模事業者の割合

小規模事業者が直面する特有の課題には以下があります:

  • 資金調達の困難:銀行融資の審査基準厳格化により運転資金確保が困難
  • 管理体制の脆弱性:経営者への依存度が高く、組織としての継続性に課題
  • スケールメリットの欠如:固定費負担が重く、効率化の余地が限定的
  • 専門人材の不足:法改正対応や事務処理を行える専門スタッフの確保が困難

業界動向と競争環境の変化

介護業界の競争環境は近年大きく変化しています。従来の地域密着型の小規模事業者中心の構造から、大手企業による市場集約が進んでいます。

市場の寡占化進行

大手介護事業者は豊富な資本力を背景に、以下の戦略で市場シェアを拡大しています:

  • 高い給与水準による優秀な人材の確保
  • 充実した研修制度とキャリア開発プログラム
  • 最新のITシステム導入による業務効率化
  • 複数事業所運営によるスケールメリット活用

規制強化による負担増

2024年の介護報酬改定では、以下の新たな要求が事業者に課されました:

  • BCP(事業継続計画)の策定・定期的な見直し
  • 虐待防止のための組織体制整備
  • 感染症対策の強化と職員研修の義務化
  • ICT活用による業務効率化の推進

業界における生き残りの条件

統計データと業界分析から、小規模事業者が持続可能な経営を行うための要素として以下が挙げられます。

業務効率化の必要性

限られた人員で最大の成果を上げるため、業務プロセスの見直しが不可欠となっています。特に以下の領域での改善が重要とされています:

  • 記録業務の電子化と自動化
  • シフト管理と実績管理の統合
  • 請求業務の自動化と精度向上
  • 情報共有プロセスの効率化

デジタル技術の活用状況

業界調査では、適切なシステム導入により以下の効果が報告されています:

  • 事務処理時間の50%削減
  • 記録漏れの大幅な減少
  • 残業時間の削減
  • 監査対応の効率化

公的支援制度の現状

政府は中小企業向けに様々な支援制度を整備しています:

  • IT導入補助金:システム導入費用の最大1/2(上限150万円)を補助
  • ものづくり補助金:業務改善に向けた設備投資を支援
  • 小規模事業者持続化補助金:販路開拓や業務効率化を支援
60-70%
IT導入補助金の採択率

効果測定と投資対効果の実態

業界レポートによると、適切な業務改善システム導入により以下の定量的効果が報告されています:

改善項目 導入前 導入後 効果
記録業務時間 1日2時間 1日1時間 50%削減
記録漏れ率 10% 0% 100%改善
月間残業時間 20時間 2時間 90%削減
監査準備期間 2週間 1日 93%短縮

投資回収期間の実態

システム導入の典型的な投資回収シナリオは以下の通りです:

  • 初期投資:300万円(税別)
  • 補助金活用後:実質負担150万円
  • 月間効果:人件費削減・精度向上により30-40万円
  • 投資回収期間:4-9ヶ月

導入における段階的アプローチ

成功している事業者の多くは、以下の段階的アプローチを採用しています:

  1. 現状分析:業務フローの可視化と課題の特定
  2. 優先順位設定:投資対効果の高い領域から着手
  3. 試験導入:小規模での効果検証
  4. 段階的拡大:成功パターンの横展開
  5. 継続的改善:定期的な効果測定と改善

今後の業界展望

介護業界を取り巻く環境は今後も厳しさを増すことが予想されます。高齢化の進展により需要は拡大する一方、労働力不足と規制強化は継続する見込みです。

市場予測

  • 2025年には介護職員が32万人不足する見込み
  • 介護報酬の大幅な増額は財政上困難
  • デジタル化とICT活用が事実上の必須要件に
  • 事業者の統廃合がさらに進行

まとめ:データが示す業界の現実

2024年の倒産統計が示すのは、介護業界における構造的変化の現実です。人手不足と制度変更という二重の圧力の中で、業務効率化とデジタル化は単なる「改善」ではなく「生存」のための要件となっています。

統計データから明らかなのは、従来の運営方法を継続している事業者のリスクの高さです。一方で、適切な投資により業務プロセスを改善した事業者は、短期間での投資回収と持続的な競争優位性を実現しています。

業界の今後を考える上で重要なのは、変化を恐れるのではなく、データに基づいた合理的な判断により、早期に対応策を実行することです。補助金制度などの公的支援も活用しながら、計画的な業務改善を進めることが、今後の事業継続において重要な要素となるでしょう。

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